客船に分類される遊覧船(ゆうらんせん)は、観光地の水域で航行する旅客船と定義されます。航行する場所は川や湖、沼に港湾といった景色が見える場所で、広義にはいわゆる水上バスも含みます。ちなみに、レストランを完備する大型の遊覧船(ゆうらんせん)は、一般的にレストラン船と呼ばれる種類の分類です。遊覧船(ゆうらんせん)は短時間を航行する船なので、個室やリクライニングシートの設備を持つケースは稀です。
基本的には船室から眺望する形で楽しむものですから、窓が大きめに設計される傾向です。外装は特に飾り気はなく、シンプルだったり懐かしさを覚えさせるデザインが主流となっています。また、水鳥を模したデザインや魚をモチーフとしていたり、イルカの形をした遊覧船(ゆうらんせん)もあります。運航が行われている場所は全国の各地にあって、中でも湖や港を中心に航行が行われるケースが多いです。海外だとイギリスのテムズ川やスイスのレマン湖、ドイツのライン川にフランスのセーヌ川と、川で運航している観光地が豊富です。アメリカでも各地で運航していますから、割と世界的に広まり定着している観光のスタイルだといえるでしょう。日本だと香住海岸が有名で、兵庫県香美町において香住東港から運航が行われていました。
香住海岸で運航していた船の名前は遊覧船かすみ丸で、1949年に運航を開始した歴史があります。2016年に廃止されるまで、実に67年ものあいだ観光客を楽しませていました。親子で営業を行っていましたが、客足の鈍りを切っ掛けに廃止と営業終了を決めた形です。香住海岸における運航がなくなったのは残念ですが、兵庫県では他も遊覧船(ゆうらんせん)が航行しているので、決して楽しめないわけではないです。しかし、船の維持にコストが掛かりますから、客足が減って収益が減れば、営業が難しくなる地域は他にも出てくると思われます。料金は1人1回あたり精々1千円~2千円なので、乗客が少しでも減少すると収益に響きます。
今後も観光地で楽しむためには、客足の増加や安定が必要になってくるでしょう。船の老朽化が進んでいる場合は特に、維持に必要な費用の確保が当面の目標となります。クルーズ船ほど豪華ではありませんが、料金が手頃で利用しやすく、貸しボートよりも便利で快適なのが魅力です。移動手段にはなりにくいものの、移動範囲が広く広範囲を楽に見て回れる点が強みです。長い歴史と観光地らしい定番の光景がありますから、これからも残す価値ある乗り物の1つだといえます。